近代建築を想う
近代建築を想う。
加茂市指定有形文化財 旧七谷郵便局
この建物は、建てられてから70年以上の年月が経っておりますが
ほとんどその形を変えず現在に至っています。
設計は県庁の技師に依頼し、加茂の名大工、佐藤定一棟梁の施工です。
屋根は瓦葺の寄棟で、正面玄関上にはマンサード屋根、縦横の
下見板張りペンキ塗り外壁に、窓枠や破風の白い線が洒落た雰囲気を
奏でています。
よく見ると、玄関扉の彫刻欄間や隅棟瓦の先に逓信業務のシンボルで
ある「〒印」も見られます。
業務室内部は木床に腰板と洋風の造作ですが、応接室兼局長室の
床の間や天袋地袋の建具には、大変凝った和風の意匠が施されています。
この小ぶりな建物の中に、和洋折衷の職人の技と魂が寄り添い、昭和初期の
面影を今日に伝えています。
愛らしい「こだわりと簡易」
なんだかおもしろい。
こだわりの建築。その中にちょこちょこある簡易。
昭和56年、この建物は郵便局としての役割を終えました。
そしてお休みの時代に入るのですが、その後ちょこちょこと
簡易的に事務所などに使われ、その仕様に合わせて改装されました。
そのため、もともとのこだわった建築と簡易的な部分とが入り混じる
建物になっています。
なんだかそこが愛らしい。
テキトウではなく「適当」。
その暮らし、仕事に適した改装がされ、その時その時に流れた時間の
跡が残されています。
建物内には、今でも郵便資料が残っておりご覧頂くことができます。
旧七谷郵便局の歴史
・1926(大正十五年):七谷にも「七谷郵便取扱所」が設置されました。
・1935(昭和十年二月十一日):七谷郵便取扱所は三等郵便局に昇格して七谷郵便局となり
七谷一円の郵便集配を行うことになりました。
取扱業務は、貯金預入と払戻、為替振出と払渡、書留、小包の引受、切手類の
販売など限られた範囲でした。
そしてこの年、現在の加茂市指定有形文化財の旧七谷郵便局を独立局社として
新築し、十月二十五日に移転しました。
・1941(昭和十六年):郵便事業と共に電話交換事務を開始しました。
・1981(昭和五十六年):七谷に国道290号が新設開通し、それに伴い郵便局舎の新築移転に
よりこの局舎は使用廃止となりました。
・2001(平成十三年):新潟県加茂市指定有形文化財に指定されました。
七谷に郵便取扱所を設置するまでは、地元の並々ならぬ努力があったそうです。